公園は広すぎて寄る辺なく感じた。川土手に出て、橋を渡って中洲へ向かった。橋から中洲へ降りる階段で、おひとりが段に掛けて、もうおひとりがカメラを構えている。さっと行こうとしたら、こんにちは、と、少し外国語の雰囲気がある調子で挨拶していただいた。
中洲は大きなくすのきの林。砂が積もっていた。以前来たときもその前の水害で中洲が水に浸ったが、それ以降、たぶん今年も、水をかぶったのだろう。
砂が積もった道を、傾いた日に照らされながら、蝉の幼虫が歩いていた。小さい。たぶんつくつくぼうしだろう。見ていて同じところを回っているようだったので、考えた末、葉っぱに載せてくすのきの根元に渡した。
ひかげちょうの仲間の蝶が、砂が少し水を吸った様子の地面に降りていた。
中洲の突端まで歩いた。砂が厚く積もっている。セイバンモロコシやオオブタクサが立ち並ぶその向こうに、川の土手と夕日。左手には川の対岸の土手。後ろを向くと、なにか南国の木のように大きな枝をたくさんくねらせて立ち上げている、くすのきがそびえていた。足跡もあり、人が来ないではなさそうだったが、誰か居る様子ではなかった。
夕日と空を眺めているうち、あちこちで夕方の音楽が流れ始めた。曲はばらばらだった。その最後のひとつに押されるように、突端を立ち去った。
ひかげちょうはそのまま同じ場所に居た。つくつくぼうしの幼虫はいなくなっていた。
公園で日暮れを待って星空を見た。夏の星々。少し満ちてきた上弦前の月が、アンタレスと斜めに並んでいる。いるか座の星々がかろうじて見える。天の川は見えるようで見えないようで、うっすら見えているのも気のせいかもしれなかった。それでも大きな星空だった。持って来たカリンバを星を写し取るようにして鳴らした。これでいよいよ夏が終わりそうだ。
2020 9/22 クスノキ 蝉の幼虫 ツクツクボウシ ヒカゲチョウ セイバンモロコシ オオブタクサ 夕日 月 アンタレス さそり座 いるか座