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2019年4月20日

道の記


山はまだ景色のところどころで山桜が咲いていた。ダム湖の中の山桜も、この景色の中のどこかにこどもを残しているだろう。そう思いながら、ダムへ続く道を登った。

桜は完全に水没したわけではなく、これまでに最も水位が上がった時点でも梢のところが水面上に残っていた。その後水位が下げられ、この日は樹冠の全体が水面の上に出ていた。双眼鏡で見たけれど花や葉は見当たらなかった。

小学校の校庭の桜は沈んで2度目の春になる。水面は静かだった。近くにいろいろな観光施設ができて、車の通りはやや多くなったようだが、橋から見下ろす水面は静かだった。

移設された杉は、枯れ枝を落とされていたほかは元気なようだった。休憩らしく、大きな車がふもとにずっと停まっていた。

杉の横の崖では山桜が散り始めていた。崖沿いの道に上がり、桜の木の近くに来ると、香りがただよった。この山里は古い時代の書物にも記された山桜の里だった。里は無くなった。山桜はこれから何を伝えていくだろう。

(4月13日)

2018年10月15日

道の記(五ヶ山・小川内)


五ヶ山・小川内を訪ねた。試験湛水中の五ケ山ダムの水位はこの夏に常時満水位に達していて、それ以降初めて訪ねた。

東小河内の桜は上部の数メートルを残して水没していた。水面上に残っている枝は遠目にはほのかに紅色に見えたが、双眼鏡では冬枯れのような白さにも見えた。隣のモッコクは梢の小枝が水面上に出ているだけだった。モッコクの小枝は上を向くと聞いているが、ちょうどそのようにたくさんの細かな枝がまっすぐに上を指していた。

小川内の側の、もともと小川内の杉がいた神社境内まわりだと思われるあたりで、杉の梢が湖面の上に残っていた。いちばん高さがあった木だろう。赤色をしていた。また、東小河内のより上流のほうの湖面に、あざやかな緑色の木の梢が見えた。若い木のように見えた。そして湖岸近くの下部が水没した木々は、ことごとく葉が落ち、もしくは変色していた。

ダムの試験湛水はまだ途中で、水位はこれからさらに数メートル上昇するらしい。

移設された小川内の杉は大過なく過ごしているようだった。短い間だけしかいなかったのでこの日全体のことはわからないが、訪れる人はまばらだった。

水面上にわずかだけ見えている桜は、冷たく眠っているようにも見えた。この眠りを来年覚ますのかどうか、いま私にはわからない。


2017年11月21日

道の記(2017年11月16日 五ヶ山・小川内)


東小河内の木々の丘には水が迫っていた。柿の木は樹冠の頂だけをダム湖の水面上に残して水没していた。枝に実が残る木のほうの梢に、1羽、大きな鳥がとまっていた。目は見開いていた。


桜は咲いていなかった。少しだけ残った葉が、色づいていた。となりのもみじは赤く染まっていた。丘の下のほうにひときわ赤い葉の木が見えた。その下が水だった。しゅろの木のそばにやや大きな木があり、枝にわずかに緑味を残した葉が見えた。その下の水面から、赤い葉の枝が伸び出ていた。


小川内の旧山祇神社境内上に位置する高い杉の木が、赤く染まっていた。


私が去るまで、鳥はずっととまっていた。

2017年4月1日

道の記(五ヶ山・小川内)


五ヶ山・小川内に行ってきた。水位はまたいくらか上がっていた。旧小川内小学校の対岸の木々が完全に水没して見えなくなっていた。

東小河内の桜はまだ咲いていなかった。今日見た様子だと、水が上がってくる前に咲くだろう。隣のもみじが芽吹いているようで、ほんのり赤く色付いていた。

桜やもみじの場所は神社の境内だったのだと思うが、その神社の移転先を見つけて訪ねてみた。ちょうど、地元の方々が近くにお出でになっていて、神社を案内していただき、昔のお話も聞かせてくださった。

移転先の神社の境内には、あまり大きくない桜やもみじの木があった。いま思うと、樹種を元の神社と同じに揃えてあるのかもしれない。春の草の花々が境内をほがらかに彩っていた。

小川内の杉は、木々そのものに大きな変化はないように見える。周囲は来るたびに少しずつどこかが変わっている。

ダムの試験湛水では直線的に貯水量を増やしていくのか途中で水を減らしたりするのか知らないが、直線的であれば、いま見えている木々が水に浸かるのはあまり遠い日のことではないだろうと思う。いまは、見えている景色を精一杯受け止めたい。

2016年11月23日

道の記(五ヶ山・小川内)


五ヶ山・小川内に行って雨の紅葉を見てきた。東小河内のもみじは1本はほぼ落葉、その手前の木に色付いた葉が残っていた。小さな木々の紅葉も美しかった。


小川内と東小河内とを結ぶ小橋のあたりに、もみじの木が多く生えていて、この季節に小川内を通ることがあるといつも橋の上から眺めていた。今日見たら橋が撤去されていた。橋のすぐそばのもみじの木もなくなっていた。川辺に残っているもみじが色あざやかだった。


旧小川内小学校から佐賀橋方向に少し下ったあたりに、桜のような木があるのに気付いた。その木も桜色に染まっているように見え、花が咲いているのかと思って双眼鏡で見てみたが、遠くてはっきりわからなかった。試験湛水の水がその木の少し下まで来ていた。


東小河内の桜には花がわずかに残っているのが見えた。春の花は見られるだろうか。


旧小川内小学校の桜の木は落葉していた。雨に濡れて黒々とした幹と枝が空へすっと伸びていた。もう空しかないと思い定めたかのようだった。


小川内の杉は現在のところ順調というお話を伺った。


いまも雨が降っているだろう。

2016年11月3日

道の記(五ヶ山・小川内 見学会)


東小河内の桜はわずかに花が残っていた。枝全体が桜色に見え、蕊が残っているのか花芽が残っているのか。

旧佐賀橋をバスが通って行くのがダムの上から見えた(私は乗れなかった)。脊振の行き帰りに佐賀橋バス停をたびたび利用した。あの道をふたたびバスが通る景色を見ることができた、でもこんなかたちで見ることになるとは思わなかった。

試験湛水についても尋ねたのだけれど、早く水位が上がるのが見たいという印象を与えてしまったような気がしている。

試験湛水で水位が上がるまで時間は相当に掛かると思うが、それでも時間の問題ではあるだろう。旧小川内小学校の桜など比較的標高が低い位置の木はあまり遠くないうちに水がやってくることになるのではないかと思う。

堤体(と呼ぶのか)の上で眼下の光景を見ていたその時間にバスが締め切りになったらしい。長い列だった。下の光景をバスで間近に見た人たちが「ダムすごい」だけでない何かをそれぞれなりに感じ取ったのだったら、乗れなかったこともあきらめられる気がする。

いやそういうことじゃない。

小川内の杉も見てきた。まわりのほかの杉にも同程度の黄変が見られ、そのことから考えて、だいじょうぶではあるのかな…と思っている。

東小河内のもみじの木が紅葉する今月の中旬から下旬のどこかで行ってみたいと思っている。

2016年10月9日

道の記(五ヶ山・小川内)


まもなく試験湛水が始まると聞いている、五ケ山ダム水没予定地の桜(写真中央)。今日見てきた。携帯写真ではよくわからないけれど、咲いていた。



前に書いたことがあるけれど、旧東小河内の桜やその隣の木々は、何かわけがあって残されているのだろうと思う。寺社や民家の木で土地の人たちが伐らないでおいてほしいと要望したなどの経緯があったのでは。その残してくれた人たちを、桜が花を咲かせて待っているような気がする。

カメラで撮った写真はもうちょっとだけ写りがはっきりしている。載せ方がまだわからないができれば載せたい。

こちらは小川内の杉。水没予定地からもっと高い場所に移設された。いまはおだやかに養生している様子。



双眼鏡だと花が見えるので、一眼レフに望遠レンズ(と言うのか正しく知らない)だとはっきり写せるのではないかと思う。できれば花が見られるうちに再訪したいけれど、いつまで咲いているだろう。

手持ちの地図にはほぼその位置に「大山神社」の記載がある。いくつかのウェブページに神社のことが書かれていて、木々はおそらく境内の樹木だったのではと思う。

4月の満開のときもそうだったけれど、桜はいまこのときを咲いていた。水に沈む前にもう一度咲いたとも思えるし、いや何度でも咲くつもりだとも思う。見てほしいかもしれないし、静かに咲いていたいかもしれない。そうしたいろいろ思われる意味意味の向こうで、桜はいまこのときを咲いていた。

(この項、10月9日から10月12日にかけてツイッターに投稿したものをまとめました)