丘の上へと建て並ぶむかしながらの団地の坂道を見上げて、団地に住んだことがないのになにか胸をかきむしられるような懐かしさがわき上がった。私はこの景色のどこにいついたのだろう。
遠い山が霞んで美しいうすみどりをしていた。どこか帰る所をずっと探して歩いている気がしてきた。いや、帰りたい所はこの景色の中だ。この景色をここに立ち止まって座っていつまでも見ていたい。しかし人間社会がそれを許さない。日も暮れてこの景色も変わってしまう。なにか食べたくもなる。私はここにいつまでもいるわけにいかず、また歩き出すしかない。
そしてその先でまた、帰りたかった景色に出会う。立ち止まる。また歩き出す。そうやってきっとずっと歩いているのだろう。