その場所を通り過ぎ終えるときに、ああここはこの前イチョウを伐採していた道だ、と思い出した。路面の凹凸をなくす工事の一環だった。振り返ると、まだ新しく見えるアスファルト舗装の平かな歩道が向こうのほうまで続いていた。そこをなにごともなく歩いてきたのだった。木はひとつも見えなかった。
前に近くを通ったとき桜のような大木がちらっと見えた市街地の小道に入ってみた。その桜は、まだ新しい福祉施設の正面植え込みからそびえていた。まちの公園で見る古い桜よりも幹周りが大きく、この一角を残して施設が建てられたように見えた。桜のとなりには別の木が寄り添うようにそびえていた。