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2019年6月3日

道の記


大くすのきの林だった場所は、重機でさかんに丘が切り崩されていた。大くすのきの切り株は見えなくなっていた。ただ、くすのきの香りだけがしていた。

ふと足元を見たら、排水溝の網からくすのきの幼木が葉を出していた。若葉を広げつつあった。大くすのきの林のどれかのくすのきの、こどもにちがいないと直観した。そっと手を触れた。


***

もう1か所の大くすのきの林は、宅地の基礎を造っていた。敷地の中のほうはもう緑色はなく、敷地の端にいたボタンクサギなどの植物も見当たらなかった。しかし歩道の植え込みに、くすのきや、えのきの幼木が育っていた。かれらも、林の木々のこどもにちがいなかった。

すべてを見てきたはずの山々が、遠く、ただただ青かった。


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