以前、ある町の桜を訪ねてたびたび通っていた。通い始めた頃のある日、犬の散歩をなさっていた高齢の女性の方に出会った。すぐ近くにお住まいで、その後も花の季節など私が桜を訪ねたときに何年も続けてお会いできていたが、しばらく前にお元気のないご様子をなさっていて、それからお目にかかることがなかった。きょう桜のところまで行ったら、その方のお宅が取り壊し工事の最中だった。まわり数軒がすでになくなっていて、何か新しい建物が建ちそうな様子だった。
桜の下のベンチには新しい人が腰掛けてスマートフォンか何かを操作しておられた。