しばらく前に蛾の幼虫を安置したマンション植え込みの、大きな桜の木の上のほうから、つくつくぼうしの声がしていた。
クサギのトンネルはクサギの花がまだ咲いていた。高い所だったが、嗅ぐとほのかに香っていた。
ざくろの木が伐られてしまった、と、その木が伐られたときにある方が深く落胆しておられた。伐られてもう何年か経つ。きょう、すぐ近くにざくろの幼木を見つけた。幼木といっても膝丈までもない。たびたびの草刈りをしのいできたのだろう。いつか、あの方のお目にも留まることだろう。
そして別の所の桜からも、つくつくぼうしの声がしていた。ゆっくりと鳴いていた。