道ゆく先々での、木々草々花々などさまざまの出会いとその後を、一筆箋に綴るつもりで。
From the Wayside: about my acquaintances of trees, flowers, weeds and others (written in Japanese)
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2017年8月11日
道の記
台風が来るという前の日だったかと思うが、電車の床にとんぼが落ちていた。乗客の人たちに避けられていた。手に取ると生きていたので連れ出し、駅を出て近くの公園へ連れて行った。左側の翅が1枚しかなく、足も減っていて、飛ぶのも動くのも無理のようで、公園の隅のつわぶきの葉に置いて別れた。
きょうまたその駅で降りた。安置した虫のその後を見ることはふだんしないけれど、きょうは公園に立ち寄った。とんぼはつわぶきの葉の上にはいず、その下で、雨宿りか日よけをするように伏せていた。台風も大風もそこでやり過ごしたのだろう。声を掛けて指で触れたらかさっとした。瞑目して立ち去った。
クサギのトンネルはいちだんと香り立っていた。落ちていた花をひとつつまんだ。その花も香り立っていた。
柳絮の木はなくなっていた。根も取り払われたようで、新しい土が入れてあった。水辺の向こうではイベントが開かれているようで、そちらへ向かう浴衣姿の人たちが夕方の道を歩いていた。
入ったお店で歌が流れていた。ぼくたちの前にこれからもこの自然が変わらずにありますように、と聞こえた。