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2017年6月5日

道の記(マンション)



こどもたちと関わる仕事をしていた時期がある。たくさんの思い出がある。ある頃、とても懐いてくる兄妹がいた。お母様が難しい病気で繰り返し入院しておられ、そのためではと聞かされていた。癌と伺ったのはだいぶ経ってからだった。

小学校の運動会に呼ばれて行ったとき、運動会が終わって空いたグラウンドでその兄妹がともだちと遊び回っている様子を、遠くからお母様がずっと見つめておられたのを覚えている。

お母様が亡くなったのはそれから少し経った、秋の深まり始める頃だった。お住まいだったマンションにご焼香に伺った。兄妹はしっかりとしていた。お父様から、お母様が以前から話をしていてこどもたちはそれぞれなりに覚悟をしていたようだと伺った。そうではあれ、つらかったことだろう。

ご家族は別のところへ越して行かれた。マンションはお母様のお世話がしやすいよう、病院に通いやすい場所で借りていたとのことだった。思えばずいぶん昔の話になる。こどもたち(よい大人になっていることだろう)、元気だろうか。

そのマンションの取り壊しが始まっていた。あおあおと茂る桜並木の向こうで、白い低い幕に囲まれて、崩され始めた建物がしずかに、おだやかに立っていた。重機が作業を止めて工事の方ともども昼休みをしていた。