ときどき夜に歩いて通るある道から、山の裾野に一軒の大きな建物の明かりが見える。高層マンションではないかと思う。暗がりの中にそこだけぽつんとたくさんの細かな明かりが並んで見えていて、そこを遠く眺めているとなぜだか胸に来るものがある。
夜、ほかにだれも歩いていない、横を車が次々飛ばしていく道をとぼとぼ歩いていると、ときどき自分が情けなくなる。そんなふうに道を歩いていて、いまは使われていない施設の前庭の茂みからユッカが花をあたま一つだけ高く差し上げているのが見えた。真っ暗な中で白い明かりのようだった。