たんぽぽのロゼットの写真を撮り忘れたと気づいて、さっきまでいた小公園に戻った。ブランコに若いお母さんと小さなこどもさんが掛けていた。私が地面にうずくまってたんぽぽの写真を撮っていると、お母さんとこどもさんは帰り始めた。お母さんと目が合って会釈をしたけれども即座に目を離された。こどもさんは私を少しのあいだ見ていた。
桜の花びらが風に吹かれて、私を追い抜いていく。車も追い抜いていった。駆けていく花びらを踏まないように歩いたが、1枚を踏んでしまった。その1枚と並んで駆けていたもう1枚の花びらが、さっと飛んでいって道の外れに降りた。
イヌノフグリはやはり桜の花びらに埋もれていて見つけられなかった。そういえばこの前は花びらに埋もれていて乾燥を免れていたのだったと思い出し、花びらを掘り返すのをやめた。今季はもうこの道は通らないと思う。元気で、と心で声を掛けて、先へ歩いた。
山は霞んでほの青かった。ほぼ、空の色だった。何かむしょうに懐かしい気持ちになったが、何が懐かしいのか思い出せなかった。
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