道ゆく先々での、木々草々花々などさまざまの出会いとその後を、一筆箋に綴るつもりで。
From the Wayside: about my acquaintances of trees, flowers, weeds and others (written in Japanese)
2018年3月31日
2018年3月30日
道の記
中心街の放置されていた植え込みは花が植えられていた。
花壇の下に、なにかトウダイグサの仲間のように見える花の茎が切られたかちぎられたかして落ちていた。花壇にはそれらしき花はなかった。花壇の隅に差してその場を立ち去った。
あまり見ないヒメオドリコソウ、今年もこれまでの場所に出ていた。ホトケノザと並んで咲いていた。
桜並木の下に、手押し車の女性の方がやってこられた。オオシマザクラの下で、鳥がつついて落ちた花をひとつひとつ拾い上げて手押し車の中に入れておられた。
公園の端の桜の伐り株は芯が腐朽して穴があいていたのだったが、そこになにか球根が植えられていた。球根は短い葉を伸ばし始めていた。
2018年3月26日
道の記
宅地になると聞いていたくすのき林だが工事の札には違うことが書いてあった。手前の丘はしだいに削られてきて、すぐ前の斜面に見えていたくすのきの伐り株はまったくなくなった。丘の上に小さな伐り株があるようにも見えるが、よくわからない。遠くの山はきょうは霞んでかすかに見えるだけだった。
その山のほうに向かって歩きながら、なにかよくわからないせつない心持ちがずっとしていた。あたりにただよう花の香りのせいかもしれず、その花の香りと結びついたむかしの思い出のせいかもしれず、その山のふもとに結びついたもっとむかしの思い出のせいかもしれない。山まで歩いてもその答えにはならなさそうだった。
2018年3月14日
道の記
旧い建物が解体されてねこじゃらし畑になり、そのあとマンションになった土地。敷地の隅に残っていたヒメウズが今年は出ていなかった。植え込みの端にカタバミの葉が見えていた。
電柱ランタナの伐り株は動きがない。その横から、ナガミヒナゲシのロゼットとアカカタバミが出ていた。
早めに咲くソメイヨシノの木は、つぼみが出ていたがまだ花の柄があまり伸びていなかった。それでもこの暖かさなので、明日明後日にも咲き始めておかしくない。その咲き始めには立ち会えなさそうだ。
数日前にはじめて水星を見た。日没後の西の低い空、金星がいくらか明るく輝いているその右上に、金星よりはやや暗く輝いている。きょう公園で双眼鏡で見てみた。金星と同じ金色に見えた。
公園のケヤキの樹冠の向こうを、さっきまで飛行機雲だっただろう長い雲がななめに横切っていた。
2018年3月12日
道の記
ホルトノキの植樹帯がなくなっていた。ところどころにほかの植物が植えられたり鉢が置かれたりもしていたのだった。横のお店に小さな鉢植えがいくつか置かれていた。
路地に面した大きなお屋敷が更地になっていた。地面から抜かれた木々が山積みにされていた。山茶花の花が見えた。敷地の端に槙の木の伐り株があった。まだ若く、根元から出ているのか伐られたのが落ちているのかわからなかったが根元で青々とした小枝が開いていた。
四つ角のひとつの角のお店の前に以前からヒメツルソバが出ていた。わずかな隙間からいきおいよく茂っていて、ある冬に寒さでやられてしまっていたのだが復活してまた茂っていた。その一帯が、舗装し直されていた。近くに来てみると隙間無く舗装されていて、ヒメツルソバが出てくる余地はなさそうに見えた。心惜しく立ち去ろうとしたとき、敷地の隅の隅にヒメツルソバの葉が少しだけ出ているのが見えた。
そのときが震災の時刻だった。遠くに雲の頂が見えていた。
道の記
唐実桜がなくなった線路脇には、柿の木の線路脇と同じように砂利が敷かれていた。大きなちぎれ根が1本、地面からうねり出ていた。そのまわりでオオイヌノフグリとフラサバソウがこまかな花を咲かせていた。
そこからあまり遠くない小さな場所で実桜が咲いていた。小さな木で、近くに寄ってみると若い頃にいちど伐られた跡があった。たぶん意図して植えられたものではなかったのだろう。いまの幹はその伐られ跡と同じくらいの太さになっている。花はなつかしく香っていた。
境内の再度伐られたくすのきは伐り株の断面がすっかり黒ずんでいた。芽が動き出している様子は見えなかった。
公園のヒマラヤスギは中程から上がなくなってしまったが、中程から下は変わらず葉を元気に茂らせていた。公園いっぱいにこどもたちが遊んでいた。
2018年3月11日
道の記
ずっと開いていないお店の前の放置されているプランターにいろいろな草がおりおり出ていたのだけれど、そのプランターがなくなった。お店の看板もなくなっていた。プランターの陰だったあたりから、ノゲシが伸び出て咲いていた。
ヒロハホウキギクが咲いていた大通りの中央分離帯をひさしぶりに渡った。ヒロハホウキギクは茎だけになって乾いて立っていた。となりのセイタカアワダチソウはかすかに緑味を残しているようだった。
坂を降りる途中、ソメイヨシノの枝が私の頭のすぐ上に伸び出していた。花芽の殻が割れていた。今年はどこで最初に花を見ることになるだろう。
宅地になることになったくすのきの林は、造成が始まっていた。手前に見えていたいくつかの大きな伐り株はどれもなくなっていた。丘の頂のあたりにいくつかの伐り株が残っているように見えたが、そこを残すという様子には見えなかった。色が変わった地面のところどころからちぎれ根が見えていた。
立ち去り際に立ち止まって振り返ると、遠くの山がくすのき林の丘と並んで見えた。山は青空の下で夕日に照らされて染まっていた。ふと、山が悲しんでいる、と思った。立ち去るとき、後ろからなにか鳥の鳴き声のような音がふたつ、きん、きん、と聞こえた。もう一度振り返ったけれど鳥は見えなかった。