2017年3月12日

道の記


マンションまわりの公開緑地が歩けるようになり、大学キャンパス時代からの木々に近く寄ることもできるようになった。2度の移植に耐えた木々はそれぞれなりに元気だったが、一部は代替されていた。コブシはもともとあまり元気な木でなかったが、なんとかいくらかの花芽を付けていた。

キャンパスの角で図書館の裏だったクスノキの一角がまちかど広場に変わった。クスノキはひとつひとつ植え込みの中に位置するようになり、株元の土は入れ替えられていた。落とされた大枝の断面近くから、たくさんの小枝が上へ伸び上がっていた。

人間にとっては、新しい「まち」をつくる華々しい一大事業で、多くの人の期待が寄せられていた(地名のツイート検索で、わくわくするという声を幾度も読んだ)。しかし、以前からそこにいた木や草花にとっては、まったく違う出来事だったろう。

生き延びたクスノキは生きながらひとり自分に問い続けているようでもあった。よく見ると、枝先に小さな新芽が付いていた。