20年前の今日、美馬牛から美瑛へと歩いた。丘のあいだを巡り、広い道や細い道をてくてく歩いた。哲学の木を見たのもこのときだった。そのときのノートに、畑の中なので近くまでは行けなかったと書いてある。
やはり北海道のことだけれど、なにげなく見た道沿いの木に何か惹かれてちょっと立ち止まった。観光地図には載っていない目立つところのない木だったが、もしかしたら自分はこの木を探していたのかもしれない、と、ちらっと思った。ここにまた来ることがあるかなと思いながら立ち去ったような覚えがある。
あの頃、私は写真をあまり撮らなかった。その木も、撮ろうかとかなり考えたのだけれど、けっきょく撮らなかった。大事に感じたものは撮らない、というか撮れなかったりした。いまでは場所も立ち姿もおぼろげにしか覚えていないけれど、元気にしてるかな、と、その木のことをときどき思い出す。