むかし、北海道(道東)のどこかの道を歩いていて、路傍に古い木の杭が立っているのを見た。近くに民家など人が暮らしている様子がない所で、道標かとも思ったがなにか碑のようにも見えて、とても厳かだった。
カメラを持っていて、写真に撮りたいと思ったのだが、どうしても撮ることができなかった。杭にはなにか字が書いてあったように思うが、それを読んだかどうか思い出せない。もうどこだったかも、なんだったのかも、わからない。
でも、いまときどき思い出す。
しずかに道端に立っているものものが、なにか「まもりがみ」のように思えることがある。たぶんそのころから。木を見始めたのもそのころからで、草を見始めたのはそれからしばらくして。
(その「まもりがみ」おのおのが「まもっている」なにか(だれか)が、おのおのある(いる)のだろうと思う)